エジプトで最初に録音を行った歌手として、またエジプトで最初の有料コンサートを行った人としても有名な歴史上のミュージシャンであり、20世紀初頭「ナハダJ (アラブ文化ルネッサンス)の動きの中で「タラブ音楽〜ターラブの王者」としてその名を馳せたアブド・アル−ハーイ・ハルミ(1857-1912)。これまではオコラのコンピに1曲とクラブ・デュ・ディスク・アラブに1枚分の復刻がされたのみで、アラブ音楽の歴史において最重要な音楽家なのに容易に聞くことが出来なかったのですが、なんと今回レバノンのARAB MUSIC ARCHIVING & RESEARCH FOUNDATION (略称AMAR) による監修・制作で、CD4枚組45トラックが一気に復刻されました。しかも、ハードカヴァーの豪華ブックレットに、ジャバラ状の袋にCDを収納という豪華さ。 ムハンマド・アブデル・ワッハーブやその先輩格のサイード・ダルウィッシュのまたその先輩格にあたるのがこのアブド・アル−ハーイ・ハルミと言うわけで、現在まで聞かれるポピュラー音楽としてのアラブ新古典とその前のアラブ古典の橋渡しをした、最重要な人物ということになります。専門家によると、そのメリスマにはトルコの軽古典の影響が聞かれるそうで、そう考えるとオスマン・トルコ統制時代とエジプトの自立という長い歴史をもその歌唱のメリスマの中には潜んでいるとも言えそうです。 そんな歴史的なこととは関係なく、アブド・アル−ハーイ・ハルミの歌唱は洒脱で軽快、今聞いてもとっても新鮮なのが驚きです。新しいアラブ音楽が生まれる瞬間がこうやって聞けるのは何とも幸せではないですか! アラブ音楽愛好家はもちろん、ワールド・ミュージック・ファン、そして、さらに上を目指すベリーダンサーも必須のアルバムです。