●キューバ独自の歌の系譜は、20世紀初頭から活躍したトロバドールと言われる一群のシンガー・ソングライターたちの活動が始まりと言われています。その音楽はトローバと言われ、現代まで引き継がれています。 ●キューバ革命後の1960年代には、そのトローバの伝統的弾き語りのスタイルを継承しつつ、新しい世代が多方面からの音楽的要素を取り入れて創り上げた「ヌエバ・トローバ」と呼ばれるムーヴメントが興りました。 ●この「ヌエバ・トローバ」は、パブロ・ミラネス、シルビオ・ロドリゲスらが中心となり牽引し、キューバのみならず、中南米カリブ諸国と連携しつつ大きな広がりを見せていきました。そして、今なお若いアーティストたちが作品を産み出し、キューバ音楽の重要なジャンルになっています。 ●本作のホセ・アキレスもまた、この「ヌエバ・トローバ」の基礎を作った重要人物の内の1人です。キューバ音楽、特にソンなどの揺籃の地として、深い伝統と文化が残るキューバの旧都、サンティアーゴ・デ・クーバで生まれ育ったホセ・アキレス氏の作品からは、その土地ならではの香りを感じることができます。 ●本作品は、ホセ・アキレスの膨大な作品群の中から、独自の厳しい基準でオリジナルやリメイク版14曲がセレクトされています。また本作の録音は、彼の所有するスタジオ「El Sótano de Amanda」で録音されましたが、海外のアーティストが使用することも多く、レコーディング・エンジニアとしての信頼も高いです。 ●このアルバムを聞くと、その多彩な楽曲群に驚かされます。ソンの香り漂う曲、ギター弾き語りでしっとり歌う曲、アルゼンチンやブラジルのシンガー・ソングライターに通じるようなコード感の曲などなど。しかし、全体を通して共通した浮遊感の様な物が感じられるのは、ホセ・アキレスのヴォーカル・スタイルとサウンド処理が成せる技なのではないでしょうか。 ●アルバム・タイトルは、「新しい道を切り開く」という意味のスペイン語。ホセ・アキレスが、その芸術的センスを持って切り開いて来た道こそこの作品であります。道はさらに、未来へと続いていきます。
曲目表:
1. La otra santiaguera 2. Amores que se fueron 3. Desnuda 4. Empeño 5. Estampa No.1 a Santiago 6. Cantarle a la ciudad 7. La vida 8. A conquistar otro camino 9. Humo de la noche 10. Será 11. Laberintos 12. Palabras para el fin de una jornada 13. Cantando soñando 14. Mira 全曲、作曲/詩はJosé Aquiles