50年代にNYのブロードウェイ・ミュージカルで活躍し映画にも出演したレバノン生まれのスター・テナーシンガー、MOHAMMED EL BAKKARのアルバムの復刻盤。彼はツアーで訪れたアメリカをすっかり気に入り、そのまま住み着いてしまったという。後にミュージカル「ファニー」のバザールのシーンでウード片手に豪快に唄いまくり絨毯を売るアラブ商人の役で一躍人気者になった。アルバムは6枚出していて本作は四枚目の作品。 魔法の絨毯でウード片手に空を飛ぶのは、El Bakkar その人。手にするウードは非常に珍しい角形の、しかもエレキウード。背後に立つ二人は、ランプならぬポットの精なのか…？とにかくつっこみどころ満載のジャケットで一度みたら忘れられないこのＣＤ。単純で素朴なリズムと、愉快な手拍子やかけ声が心地よく聞き手をアラビアンナイトの街へと誘ってくれる。8曲目のイントロにはOum Kalthoumのレパートリー「ＡｗｉｄｔＡｉｎｉ」の感想の一部が聴いてとれる。目をつぶればそこに夢の世界が広がり、ジンや魔法使いが舞出でる、聴いてよし、踊ってよしの全12曲。 EL BAKKARは1959年に公演中に倒れたまま、46歳の若さで亡くなったが、その作品は今でも多くのファンに愛され続けている。
