アフリカ音楽、とりわけ西アフリカに位置するマリは、アフリカの音楽大国のひとつとして古くからその地に息づく音楽が紹介されてきました。1960年にフランスから独立を果たした後、レイル・バンドらの台頭によってポピュラー・ミュージックが繁栄してきたその一方で、“世襲制伝統芸能集団”グリオーたちが伝えてきた伝統音楽も同国の音楽文化を豊かなものにしてきました。そんなマリに息づく様々な伝統音楽をベースにした音楽シーンにおいて、60〜90年代に活躍したパイオニアたちを紹介する2LP『The Lost Maestros』がCD化されたので、サンビーニャ・インポートとしてご紹介することにいたしました。 本作を制作したのは、マリ・セグーにて2008年に設立したインディ・レーベルのMIERUBA。2010年には、サリフ・ケイタが在籍していたことで知られるレ・アンバサドゥールのドラマーとして活躍したマンガラ・カマラ(1960-2010)の遺作を発表。そしてマンガラのキャリアとビジョンに触発された8人のマリのミュージシャンとグループをサポートするため、“The Lost Maestros”というシリーズを8年間に渡ってリリースしてきました。そして本作はそんなシリーズの中から選りすぐりのトラックを16曲集めたベスト編集盤です。 特にセグーに息づく伝統音楽を基盤とし、さらにアフリカン・ブルースやラテン音楽、アフロ・ジャズ、アフロビートを演奏する演奏家/歌手らをフィーチャーしたのが、この“The Lost Maestros”というシリーズ。冒頭はンゴーニ奏者バセク・クヤテとのコラボでも活躍したソク(一弦フィドル)奏者のズマナ・テレタの演奏からスタート。バンバラ歌手からレゲエ歌手に転向したアスキア・モジボAI、西アフリカの打楽器奏者として5本の指に入るラブーズーB、マリやブルキナ・ファソの一部に暮らすボボ人の伝統音楽を継承するチョワ・デンベレCK、現代マリ音楽の祖父のひとりトリコ・ボーイDL、そしてもちろんマンガラ・カマラGNの演奏もしっかりと収録されています。 アフリカ音楽通でもなかなか耳にすることが難しい貴重な音源ばかり。ファンの方には絶対お勧めの1枚です。