ライ・クーダー、タジ・マハール、ジェリー・ガルシア、そしてリチャード・トンプソン…枚挙のいとまがないほど挙がり続ける魅力的な天才ギタリストたちの名前。そんな彼らに絶大なるインパクトを与えすっかり虜にさせてしまったのが、このバハマ諸島アンドロス島出身の異才:ジョセフ・スペンス(1910-84)でした。今回はご紹介する作品は、彼の最全盛期に当たる1965年にレコーディングされたものの、これまで決して世に出ることのなかった蔵出し音源。つまり貴重なアーカイブから制作された、まったく〈新しい〉アルバムなのです! バハマ諸島アンドロス島で牧師の息子として誕生したジョセフ・スペンスは、アメリカに出稼ぎで出た際に覚えた歌をバハマに持ち帰り、石工の仕事の傍らギターで弾いていました。そして1958年、音楽学者サミュエル・チャーターズに「発見」された彼は、生まれて初めてレコーディングというものを経験します。その後1960から70年代にかけ、数回のレコーディングとアメリカでの公演を行いましたが、音楽を生業とする事はなく、1984年に亡くなりました。しかしながら、その特異なチューニング(ドロップDチューニング)から生み出される独特なベースラインとリズム、そして遊び心と冒険心に彩られた軽快な即興演奏でバハマの伝統音楽を刷新し、世界中のプレーヤーに影響を与えた彼。その流麗かつ天才的な指さばきは、ギター界におけるセロニアス・モンクと称されたほどであり、またその力強い歌声で歌われるバハマの海綿漁師たち伝統の韻を踏んだスタイルの歌詞や、歌唱中に差し込まれる独特なスキャット、ハミングなどは、人々に新鮮な衝撃と感動を与えたのです。 今回ご紹介する作品には、彼のレパートリとしてお馴染み‘Out ont he Rolling Sea’や‘Bimini Gal’ほか、アンドロス島の賛美歌や漁師の歌などの貴重なライヴ録音に加え、ジョセフの妹:エディス・ピンダーや彼女の家族とともにコール・アンド・レスポンス形式でうたわれる’Death & the Woman’や、ピート・シーガーが在籍していたことでも知られるウィーバーズの録音でも有名な、1929年バハマでの船舶事故を歌った悲しい名曲‘Run Come See Jerusalem’など、これまでの録音作品では決して聴くことのできなかったナンバーもしっかりと収録!録音状態/マスタリングも驚異的なまでに素晴らしく、その躍動感や息遣い、そして美しすぎるギターの響きが、まるで聴いている人のまさにすぐ傍でリアルタイムで展開しているかのような、実にリアルな存在感を持って耳の中に広がります。それに加え、貴重なお宝写真の数々とともに愛情溢れる素晴らしい解説(英文)が掲載されたブックレットも出色の出来!作品細部にわたり、何とも味わい深い感動があります。このスミソニアン・フォークウェイズ渾身の一枚。ジョセフ・ファン、ライ・クーダーをはじめとするギタリスト・ファンにとってマスト・アイテムとなることは勿論、ありとあらゆる音楽ファンの心も鷲掴みにすること間違いなしの大推薦盤です!
(メーカーインフォより)
曲目表:
1. Won't That Be A Happy Time 2. Out on the Rolling Sea 3. Down By the Riverside 4. Bimini Gal 5. The Crow 6. In Times Like This 7. Death & the Woman 8. Give Me that Old Time Religion 9. Run Come See Jerusalem 10. Brown Skin Girl 11. The Glory of Love 12. Great God What Do I See & Hear 13. That Glad Reunion Day