アルゼンチンが生んだフォルクローレの最高峰である音楽家アタウアルパ・ユパンキ(1908ー92)。その全盛期の素晴らしさを知らしめる作品として、音楽ジャーナリストの竹村淳氏が主宰する“テイクオフ”から『1936〜1950』(TKF-2915)、『1953〜1960』(TKF-2933)、そしてそれらの続編としてテイクオフとオフィス・サンビーニャによる共同レーベル“TAKE OFF & SAMBINHA”から2016年に発売された『1962〜1965』、以上3つの編集盤がリリースされています。そしてこのたび、2018年1月のユパンキ生誕110年を記念して“TAKE OFF & SAMBINHA”より新たな編集盤がリリースされることになりました。 アルゼンチンで生まれたユパンキは幼少のころに民謡の宝庫でもある国の最北部に移り、そこで音楽の土台を築きあげます。20歳ぐらいになるとそんな伝統音楽を吸収した作曲も開始し、1936年、28歳で初めての録音を経験。それから50年代になると渡欧を経験しそこで名声を確立すると、アルゼンチンとヨーロッパを行き来して録音をたくさん残し、ついには世界中の音楽ファンから親しまれるようになりました。64年には記念すべき初来日を果たしています。
1960年5月を最後にしばらく録音から遠ざかっていたユパンキは、62年6月に録音を再開すると、67年8月にかけて数多の名録音を遺した。そのうち1962年から1965年にかけての主な録音は好評発売中のアルバム『アタウアルパ・ユパンキ 1962〜1965』(TKSB-004) に聴ける。 いつもは一人で孤高の弾き語りを繰り広げるユパンキとしては極めて珍しい録音を本作に収録。フォルクローレ・ユニット、ロス・カントーレス・デ・キジャウアシや“エル・チュカロ”ことサンティアゴ・アジャラらとの共演がそれで、巨人の新たな側面が窺い知れる。ちなみにこれは1965年にブエノス・アイレスのアストラール劇場で上演されて評判となったショー “Magia Misterio del Folklore フォルクローレの魔力と神秘”の成功を記念して作られた同名のLPからユパンキの出演部分を収録したもの。そして1966年にユパンキがアルゼンチン・オデオンに遺した9曲から名演の誉も高い「私は光になりたい」など8曲を収録。さらに特筆すべきは1964年1月〜2月に初来日する直前の63年11月22日に録音した自伝的大作「追われる身のパジャドール」を収録したこと。37分近い長尺ゆえに敬遠されがちで、これまで8枚組のユパンキ全集の特典盤として1992年に一度リリースされただけだが、ユパンキを知る上で避けては通れない重要な名曲名演です。